本の内容
「メークアップは楽しいものだ。誰かに言われていやいやするものではない」
有名メイクアップ・アーティストの
ケヴィン・オークインは
3冊目の著書『Face Forward』でこう断じる。
ファッション業界、芸能界、そして上流社会において
いま最も人気を集めるスタイリストであるオークインは
アメリカ南部の生まれ。
80年代前半にニューヨークの
ファッション・シーンに躍り出た。
当時の風潮だった、50年代への
回帰色も濃い保守主義や
ヒステリックな価値観に
代表されるマッカーシズムを
あざ笑うかのような登場だった。
彼のキャリアは、受容、多様性、自分を愛すること…
という「フィール・グッド」の
理想に沿ったものであったが
やがて、「美」のほうから進んで
彼の夢に寄り添うほどになった。
うわべ重視でエリート意識の
強いことで知られる業界で
どうやって彼が成功までのぼりつめたのか、
いぶかしむ向きもあるだろう。
だが、オークインの語る言葉には
大きな影響力があり
その技術を少しだけ使えば
魔法にかかったような効果が表れるのだ。
過去、現在、そして未来における
美の探究というコンセプトを持つ
『Face Forward』は、メイクアップの
変幻自在で創造的な可能性を示す
工夫に富んだスタイルブックだ。
グラビアに登場するのは
ジュリア・ロバーツからシャロン・ストーン
さらにマーサ・スチュワートと
その母親のテルマ・スチュワートと
多岐にわたっている。
また彼がつくりあげた「顔」は、
うっすらメークの素人モデル(友人たち)から、
念入りに手を入れてつくりあげた往年の
ハリウッドスターに至るまでと実に幅広い。
たとえば
オードリー・ヘプバーン(キャリスタ・フロックハート)
ジェームス・ディーン(グウィネス・パルトロー)
ベロニカ・レーク(なんとマーサ・スチュワートなのだ!)
それにポップ・カルチャーの有名人、たとえば
シェール(社交界の華、アレクサンドラ・フォン・フルスタンベルグ)
スージー・スー(ウィノナ・ライダー)も登場する。
最終章は彼がイメージする
近未来の顔で締めくくられている。
顔全体をナスのような色で
ペイントされたメアリー・J・ブライジが
メタリックな虹色のアイシャドーと、
グロスをかなり利かせた
赤い口紅で登場する「エクスプローラー」
『真夏の夜の夢』に出てくる妖精をイメージしたという
そばかすだらけのルーシー・リューの「フロラリア」
そしてオレンジ色の髪をしたシャロン・ストーンが
片方の胸をさらけ出してSF小説を思わせる
魔性の女にふんする「ミロのビーナス」
オークインは終始、メークの説明を段階ごとに加え
それぞれの顔やモデルについて
肩の凝らないコメントを披露して
友情や政治
(彼は90年代の可能性を広げたとしてクリントン政権をくり返し賞賛している)
そして環境といった話題をちりばめながら
色彩豊かな本書をさらに魅力的にしている。
「個性を認めること(強調することだってできる)
それがメークアップのもつ素晴らしい点のひとつ」
とオークインは主張する。
そしてこの『Face Forward』は
その信念を見事に証明した1冊だ。
メークアップが楽しい人、
その無限とも思える可能性を
試してみたいと思っている人が、
本書から得るものの大きさは測り知れない。
状態について
新品
発行年: 2001年
言語: 英語
ペーパーバック: 176ページ
洋書のサイズ: 30.7cm x 23.1cm x 1.5cm